消滅時効の援用とは?借金帳消しの条件と詳しいやり方を徹底解説

借金を抱えていると、返済に追われて生活が苦しくなることもありますよね。そんな時、「消滅時効の援用」という方法で借金が帳消しになると聞き、希望を抱く人もいるでしょう。

実際のところ、消滅時効とはどのような仕組みなのか、本当に借金が0円になるのか、よく分からないという人も多いのではないでしょうか。

この記事では、消滅時効の援用について、成立の条件や具体的な方法、メリット・デメリットまで、分かりやすく解説していきます。

時効の援用は、できるケースとできないケースがあるため、検討する場合は正しい知識を身に付ける必要があります。そのために役立つ内容ですので、借金問題でお悩みの方は、ぜひ参考にしてみてください。

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消滅時効の援用って何?借金が帳消しになるってホント?

消滅時効の援用って何?借金が帳消しになるってホント?

消滅時効の援用とは、借金の返済義務を消滅させる法的な手続きです。一定の条件を満たした上で、債務者が時効を援用することで、借金の支払いが免除されます。では、その仕組みと概要について、詳しく見ていきましょう。

消滅時効の援用とは?

消滅時効の援用とは
消滅時効の援用とは、民法166条1項に規定されている制度で、一定期間債権者から請求がない場合に、債務者が時効を主張することで借金の支払い義務が消滅するというものです。

つまり、債権者が長期間にわたって権利行使をせず、債務者への請求を怠っていた場合に、債務者は時効の援用が可能です。時効の援用が認められれば、借金の返済義務は法的に消滅し、債務者は支払いを免れることができます。

ただし、時効の援用が認められるためには、一定の条件を満たす必要があります。単に時間が経過しただけでは不十分で、債権者からの請求がないことや、債務者が時効を主張することなどが必要です。

消滅時効が成立する条件は?

消滅時効が成立するためには、大きく分けて二つの条件を満たす必要があります。

一つ目は、債権者が権利を行使せず、最後の弁済日から一定期間が経過していることです。2020年4月1日の改正民法施行により、現行法での消滅時効の成立期間は原則5年に統一されました。つまり、最終の返済から5年間、債権者から請求がなければ、時効が成立する可能性があるということです。

二つ目は、その時効期間内に、債務の承認や一部弁済などの時効更新事由がないことです。例えば、債務者が借金の存在を認める発言をしたり、利息の支払いをしたりすると、時効の起算点が更新されてしまいます。

これら二つの条件を満たせば、債務者は消滅時効の援用が可能です。

消滅時効の援用で借金が本当に帳消しになるの?

結論から言えば、消滅時効の援用が認められれば、借金の支払い義務は法的に消滅し、実質的に帳消しとなります。

ただし、時効の援用が認められるためには、先述の通り一定の条件を満たす必要があります。時効期間が経過したからといって、自動的に借金が消滅するわけではありません。債務者が時効を主張し、それが認められることが必要です。

もし債務者が時効を主張しなければ、たとえ時効期間が経過していても、債務は存続し続けることになります。

また、時効の成立判断を誤ると、かえって不利益を被る可能性もあります。専門家に相談し、慎重に対応することが重要です。

消滅時効が成立する3つの条件とは?

消滅時効が成立する3つの条件とは?

消滅時効が成立するためには、いくつかの条件を満たす必要があります。では、その成立要件について、詳しく見ていきましょう。

1.弁済期から一定期間の経過

消滅時効が成立する第一の条件は、最終弁済日から一定期間が経過していることです。

2020年4月1日の改正民法施行により、この消滅時効期間は原則として5年に統一されました。つまり、最後の弁済日から5年間、債権者から請求がなければ、時効が成立する可能性があるのです。

例えば、2021年4月1日が最終返済日だったとすると、2025年4月1日に時効期間が満了します。この5年間に債権者から請求がなければ、債務者は時効を援用できます。

ただし、この期間の計算には注意が必要です。債権者が権利を行使した場合など、一定の事由があれば、時効の完成が猶予されたり、更新されたりすることがあります。

2.時効の完成猶予・更新事由がないこと

消滅時効が成立する第二の条件は、時効の完成猶予事由や更新事由がないことです。

民法では、一定の事由がある場合、時効の完成が猶予されたり、更新されたりすると定められています。

例えば、債権者が支払督促の申し立てをしたり、差押えをしたりすると、時効の完成が猶予されます。また、債務者が債務の一部を弁済したり、債務の存在を承認したりすることは、時効の更新要件です。

これらの事由があると、たとえ5年が経過していても、時効は成立しません。債権者の権利行使や、債務者の行動によって、時効の起算点がリセットされます。

時効の成立を主張するためには、こうした完成猶予事由や更新事由がないことを確認する必要があります。

3.時効の援用

消滅時効が成立する第三の条件は、債務者が時効を援用することです。

時効期間が経過したからといって、借金が自動的に消滅するわけではありません。時効の利益を受けるためには、債務者が自ら時効を主張する必要があるからです。

この時効の援用は、訴訟の場や、債権者への通知によって行うのが一般的です。債務者が時効の成立を主張し、それが認められて初めて、債務の支払い義務が消滅します

逆に言えば、債務者が時効を援用しない限り、たとえ時効期間が経過していても、債務は存続し続けます。時効の成立は、債務者の意思表示にかかっているといえるでしょう。

消滅時効の援用ってどうやるの?具体的なやり方は?

消滅時効の援用ってどうやるの?具体的なやり方は?

消滅時効の援用には、一定の手続きが必要です。どのようにして時効を主張し、借金の支払い義務を消滅させるのか。ここでは、消滅時効の援用方法について、具体的に見ていきましょう。

内容証明郵便で時効の援用を通知

消滅時効の援用は、債権者に対して時効の成立を通知することから始まります。

具体的には、内容証明郵便を利用して、債権者宛てに時効援用通知書を送付します。内容証明郵便は、発送日と宛先、内容を郵便局が証明してくれるサービスです。通知が確実に債権者に届いたことを証明できます。

通知書には、債務の特定に必要な情報(契約日、債権者名、債務額など)と、時効期間が経過した旨、そして時効を援用する旨を明記します。

文書の到達をもって、時効の援用は完了です。

ただし、通知書の内容には注意が必要です。債務の存在を認めるような表現は避けなければいけません。時効の利益を受けられなくなってしまう恐れがあるからです。

時効援用通知書の書き方

では、時効援用通知書には、具体的にどのようなことを記載すればよいのでしょうか。

まず重要なのは、債務の特定に必要な情報を漏れなく記載することです。契約日、債権者名、債務額といった基本的な情報は必須です。これらを明記することで、どの債務について時効を援用するのかを明らかにします。

次に、時効期間の経過と、時効を援用する旨を明記しましょう。最終弁済日から5年以上経過していること、その間に債権者から請求がなかったことなどを記載します。そのうえで、民法166条1項に基づき、時効によって債務が消滅した旨を主張します。

ただし、現在の債務額を記載したり、「〇〇をもって債務の支払いに代える」といった表現は避けてください。債務の存在を認めたとみなされ、時効の援用が認められなくなる可能性があります。

弁護士に依頼するメリット

消滅時効の援用は、専門的な判断を要する手続きです。時効の成立を適切に判断し、債権者とのトラブルを避けながら、円滑に手続きを進める必要があります。

おすすめなのは、弁護士に依頼することです。弁護士には、時効の成立要件を正しく判断し、適切に時効を援用するノウハウがあります。時効の成立状況を見極め、最適な方法で援用の手続きを進めることが可能です。

また、通知書の作成や発送の代行も、弁護士に任せることができます。書面の内容や表現を適切なものとし、トラブルのリスクを最小限に抑えられます。

さらに、万が一債権者から異議が出た場合も、弁護士に交渉や手続きの代行を依頼することが可能です。法的な知識と経験を持つ弁護士に依頼することで、時効の援用がスムーズに進められます。

消滅時効の援用に失敗しないための3つの注意点

消滅時効の援用に失敗しないための3つの注意点

消滅時効の援用は、借金の支払い義務を免れるための重要な手続きです。しかし、時効の成立判断を誤ったり、適切な方法で援用しなかったりすると、かえって不利益を被ることがあります。ここでは、消滅時効の援用に失敗しないための注意点を見ていきましょう。

安易に債権者と連絡を取らない

消滅時効の援用を検討している場合、まず注意したいのが、債権者との連絡です。

時効の成立前に安易に債権者と連絡を取ると、時効の完成猶予や更新の口実を与えてしまう恐れがあります。

例えば、債務の存在を認める発言をしたり、支払いの意思を示したりすると、時効がリセットされる可能性があるのです。

債権者から連絡があっても、軽率に応じるのは避けましょう。時効の成立を慎重に見極めてから、適切な方法で対応することが大切です。

弁護士に相談し、連絡の要否や内容を検討してもらうのも一つの方法です。法的な観点から判断した、適切な対応方法を確認できます。

弁済をしない、督促に応じない

消滅時効の成立前に、債務の弁済をしたり、督促に応じたりすることは避けなければいけません。

債務の一部でも弁済をすると、時効はその時点でリセットされてしまいます。たとえわずかな金額でも、支払ってしまえば、時効の起算点が更新されるのです。

また、債権者からの督促にも応じないことが重要です。督促に対して何らかの応答をすると、債務の存在を認めたとみなされる可能性があります。

債権者からのアプローチがあっても、弁護士に相談しながら、慎重に対応することが大切です。

時効の援用は慎重に、できれば専門家に相談

消滅時効の援用は、慎重に行わなければいけません。時効の成立を安易に判断し、援用の手続きを誤ると、かえって不利益を被る可能性があるからです。

特に、時効の成立要件の判断は難しい問題です。単に5年が経過したからといって、時効が成立するとは限りません。債権者からの請求の有無や、債務の承認の有無など、さまざまな事情を考慮しなければいけません。

また、時効援用通知書の内容にも、注意が必要です。債務の存在を認めるような表現をしてしまっては、時効の利益を受けられなくなってしまいます。

こうしたリスクを避けるためにも、可能であれば弁護士などの専門家に相談することが望ましいです。時効の成立要件を適切に判断し、トラブルを避けながら援用の手続きを進められます。

専門家の力を借りて、適切に時効を援用することが大切です。

消滅時効の援用で借金が帳消しになるメリットとデメリット

消滅時効の援用で借金が帳消しになるメリットとデメリット

消滅時効の援用によって借金の返済義務がなくなるメリットがある一方で、信用情報に傷がつくデメリットもあります。ここでは、消滅時効の援用で借金が帳消しになることのメリットとデメリットについて詳しく解説していきましょう。

メリット:借金の支払い義務がなくなる

消滅時効の援用が認められれば、債務者は借金の返済義務から解放され、借金の支払いを求められなくなります。これは債務者にとって大きなメリットと言えるでしょう。借金返済の重荷から解放され、新たな人生をスタートさせるチャンスにもなります。

ただし、消滅時効が成立するためには一定の条件を満たす必要があることに注意が必要です。時効の成立要件を慎重に見極め、適切に行使することが重要となります。

メリット:債務整理の費用が不要

任意整理や個人再生といった債務整理の手続きを行う場合、一般的に弁護士費用などのコストがかかります。しかし、消滅時効の援用では、そうした債務整理の費用を負担する必要がありません。

もちろん、時効の援用を弁護士に依頼する場合は一定の費用が発生しますが、債務整理ほどの高額な費用ではないのが通常です。消滅時効の援用は費用面でもメリットがあると言えるでしょう。

ただし、時効の援用が認められるかどうかは状況によって異なるため、安易に時効援用を選択するのではなく、専門家に相談して適切に判断することが大切です。

デメリット:信用情報に傷がつく可能性

消滅時効の援用によって債務が法的に消滅したとしても、信用情報機関の記録は自動的には消滅しないことがあります。

つまり、情報が更新されるまでは債務不履行の履歴が信用情報に残るということです。将来的に、消費者金融の利用や住宅ローンの審査などに影響を与える可能性が考えられます。

ただし、信用回復の手続き等について弁護士に相談すると、債権者に働きかけて個人信用情報を更新できることがあります。信用情報がどうなるかは場合によって異なるため、不安であればこの点もあわせて弁護士に相談すると安心です。

消滅時効の援用がうまくいかない…そんなときの対処法は?

消滅時効の援用がうまくいかない…そんなときの対処法は?

消滅時効の援用を検討したものの、うまくいかないケースもあるかもしれません。債権者から反論されたり、時効の成立要件を満たしていなかったりと、様々な理由が考えられます。そんなときの対処法について考えてみましょう。

時効の成立要件を再確認する

消滅時効の援用がうまくいかない場合、まずは時効の成立要件を再度確認してみることが大切です。

時効期間の計算に間違いはなかったでしょうか。また、時効の完成猶予事由や更新事由を見落としていないか、改めて検討してみましょう。

場合によっては、弁護士に相談して、時効成立の可能性を専門的な視点から見直してもらうのも一案です。時効の成立要件を正確に把握し、適切に手続きを行いましょう。

債務整理の方法を検討する

消滅時効の援用が難しいと判断された場合、債務整理を検討するのも一つの選択肢です。任意整理や個人再生といった手続きを利用することで、借金を減額し、返済負担を軽減できる可能性があります

債務者の収入や資産状況、借金の内容などを総合的に考慮し、最適な債務整理の方法を選択することが重要です。弁護士に相談することで、債務者の状況に合わせた債務整理の提案を受けられるでしょう。

時効援用以外の道を模索することで、借金問題の解決につながる可能性があります。

返済計画を立て直す

消滅時効の援用が認められない場合、現実的な返済計画を立て直す必要があります。まずは、自身の収入と支出を見直し、どの程度の返済が可能か把握しましょう

その上で、債権者と交渉し、無理のない返済額や期間を設定することが大切です。返済計画の見直しだけでなく、債務整理や法的手続きといった選択肢も視野に入れながら、弁護士に相談することをおすすめします。

借金問題の解決には様々なアプローチがあるため、柔軟に対応策を検討していくことが重要と言えるでしょう。

消滅時効や借金問題に関するよくある質問

消滅時効や借金問題について、債務者の皆さんから寄せられるよくある質問にお答えします。消滅時効の援用に関する疑問や、借金問題に悩む方々の素朴な疑問を取り上げ、分かりやすく解説していきましょう。

Q. 消滅時効の援用は、債務者しかできない?

原則として、消滅時効の援用は債務者本人のみできる手続きです。

ただし、連帯保証人や物上保証人など、債務者と一定の利害関係を有する者も、援用できる場合があるとの判例があります。

こうした事情がある場合、当事務所でも相談を受け付けています。債務者本人以外の方からのご相談も、状況に応じて柔軟に対応可能です。消滅時効の援用について疑問や不安があれば、専門家に相談することをおすすめします。適切なアドバイスを受けることで、有効な時効援用につなげられます。

Q. 消滅時効の援用は、過去に遡って適用される?

消滅時効の援用の効果は、援用時点以降について生じます。

つまり、援用が認められれば、その時点以降の債務の支払い義務が消滅するということです。過去に支払った分について、時効を理由に返還を求めることはできません。時効の援用は将来に向かって効力を発生させるものであり、さかのぼって適用されるわけではないのです。

ただし、過去の支払いが時効中断の効果を持つ場合もあるため、注意が必要です。時効の援用に際しては、過去の経緯も含めて総合的に判断することが大切だと言えます。

Q. 消滅時効の援用後に、再び同じ債権者から借金することは可能?

法律上は、消滅時効の援用後に再び同じ債権者から借金をすることは可能です。

しかし、実際には困難なケースが多いと言えるでしょう。新たな借り入れの審査では、過去の取引履歴がチェックされる可能性が高いからです。時効援用の事実が債権者に知られれば、新規の借り入れを断られるリスクがあります。

あくまで債権者の判断次第ではありますが、円滑な借り入れは難しいと考えられます。時効援用後の借り入れについては、慎重に検討する必要があります。

まとめ

消滅時効の援用は、一定期間債権者から請求がない場合に、債務者が時効を援用することで借金の支払い義務がなくなる制度です。

ただし、時効の成立には、最終弁済日から原則5年の経過、時効の完成猶予・更新事由がないこと、債務者による時効の援用が必要となります。時効援用の方法としては、内容証明郵便での通知が一般的ですが、弁護士に依頼することで、適切な判断やスムーズな手続きが期待できるでしょう。

一方で、時効援用により債務の返済義務が消滅しても、そのままでは信用情報に傷が残ったままになる可能性があることには注意が必要です。万が一、時効援用がうまくいかない場合は、債務整理や返済計画の見直しも検討すべきです。

借金問題でお悩みの方は、まずは専門家に相談することをおすすめします。当事務所でも、メールフォームや電話、LINEにて相談を受け付けておりますので、お気軽にご連絡ください。

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