時効援用は自分でできる?通知書の書き方と弁護士に頼むべきケースを解説

借金の時効援用について、自分でできるのか、どのように通知書を書けばいいのか、弁護士や司法書士に依頼すべきケースは何か、といったことをお悩みではないでしょうか。

法的には自分でも時効援用はできますが、期間の計算を誤ったり、方法を間違えたりするリスクがあります

複雑なケースや、債権者からの督促が続いている場合などは、時効援用のプロである弁護士・司法書士への依頼がおすすめです

この記事では、時効援用の基本的な知識から、通知書の書き方、弁護士への依頼が適切なケース、時効援用後の注意点まで、詳しく解説していきます。

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時効援用って自分でできるの?

時効援用って自分でできるの?

時効援用とは、借金などの債務が一定期間行使されないことで、その債務が消滅したと主張することです。では、この時効援用は自分で行うことができるのでしょうか。

時効援用について、法律上の定めや実際の手続きなどを見ていきましょう。

時効援用は法的には自分でもできる

意外なことに時効援用を行う際、特に法律で定められた厳格な「様式」「方式」はありません。つまり、口頭であっても書面であっても、時効援用の意思表示さえ伝われば「法律上は」有効とされているのです。したがって、法的に見れば、自分で時効援用を行うことは可能だといえます。

ただし、時効援用の手続きには期間の計算など、専門的な知識が必要です。また、債権者との交渉も発生する可能性があります。

そもそも方法によっては「そんなもの受け取っていない」だとか、ひどい業者になると「無視」という方法をとるケース(※)もあります。

※様式・送達方法に不備がある場合など

そのため、単に法的に可能だからといって、誰でも簡単に時効援用ができるわけではないのが実情なのです。

自分でやると失敗するリスクが高い

先述の通り、時効援用には一定の専門知識が求められます。特に、時効期間の計算は非常に重要です。この計算を誤ってしまうと、時効が成立していないのに援用してしまい、トラブルに発展するおそれがあります。

また、時効の援用方法を間違えてしまうリスクもあります。たとえば、債権者に対して適切な意思表示ができなかったり、証拠を残せなかったりすると、後々問題になる可能性があるのです。

万が一、時効援用に関してトラブルが生じた場合、専門的な交渉能力や法的知識が求められるため、法律の専門家ではない一般の方が対処するのは困難と言えるでしょう。

弁護士や司法書士に依頼するのがおすすめ

時効援用を確実に成功させ、リスクを回避するには、弁護士や司法書士に依頼するのが最も賢明な選択だといえるでしょう。

弁護士や司法書士は、豊富な経験と専門知識を持っているため、時効援用を適切に進めていくことができます。期間の計算や援用の方法など、専門的な判断が求められる場面で、依頼者の代わりに的確に対応してくれるのです。

また、万が一トラブルが発生した場合も、弁護士や司法書士が交渉などを行ってくれるため、依頼者は安心して任せることができます。時効援用だけでなく、債務整理など借金問題の総合的な解決についてもアドバイスしてもらえる点も大きなメリットです。

自分で時効援用を行うことは可能ですが、失敗のリスクを考えると、弁護士や司法書士への依頼が最も確実で安全な方法だといえるでしょう。

時効援用通知書の書き方

時効援用通知書の書き方

時効援用を行う際、債権者に対して時効の成立を主張する通知書を送付するのが一般的です。

では、この時効援用通知書にはどのような内容を盛り込めばよいのでしょうか。ここでは、通知書の書き方について解説します。

時効援用通知書に必要な要素

時効援用通知書を作成する際、まず押さえておくべき要素があります。具体的には以下の点を記載しておくことが必要です。

記載事項
  • 債権者の正式名称と住所
  • 債務の内容
  • 時効の起算日と時効が完成した日
  • 時効を援用する意思
  • 通知書を出す自分(債務者)の情報

まずは、通知書の宛先となる債権者の正式名称と住所を明記します。個人の場合は氏名、法人の場合は会社名などを正確に記載しましょう。

また、時効の対象となる債務を特定する必要があります。いつ、いくら借りたのかなど、債務の内容を具体的に明示しておくことが重要です。そして、時効期間が経過した旨を記載します。時効の起算日と時効が完成した日を明記しておくとよいでしょう。

時効を援用する意思を明確に表示するため、「時効を援用する」といった文言を盛り込むことが大切です。

なお、通知書を出す自分(債務者)の情報を記入します。氏名、住所、連絡先を漏れなく記載するようにしてください。

通知書の形式

時効援用通知書の形式は、特に法律で定められてはいません。したがって、A4用紙に手書きで記載しても、パソコンで入力して印刷したものでも構いません。

ただし、通知書であることを明確にするため、文書の日付は必ず記載しておきましょう。また、自署するか、記名押印しておくことで、本人が作成した文書であることを証明することができます。

なお、通知書は内容証明郵便で送付することが望ましいとされています。内容証明郵便は、文書の内容を郵便局に保証してもらえるサービスです。トラブルが生じた際には、通知書の存在を立証する有力な証拠となることでしょう。

内容証明郵便で送付する内容文書(正確にはその謄本)には、字数・行数の制限があります。

縦書きの場合には「1行20字以内、1枚26行以内」、横書きの場合には「1行20字以内、1枚26行以内」「1行13字以内、1枚40行以内」「1行26字以内、1枚20行以内」のいずれかを守るようにしましょう。

とは言え、やはり弁護士に相談するのが良い方法であることは言うまでもありません。

通知書の送付方法

作成した時効援用通知書は、内容証明郵便で債権者に送付します。

時効援用通知書は、同様のものを3通準備します。それぞれ債権者への送付用(内容文書)、郵便局控え用、控え用となるものです。封筒の封は職員の目の前ですることになりますので、郵便局に持ち込む段階では封は絶対にしないようにしましょう。

さらに、配達証明を利用することで、通知書が債権者に確実に届いたことを証明することができます。

通知書の控えは、送付した事実を立証する証拠となるため、必ず手元に保管しておきましょう。債権者から連絡があった際など、後々役立つ可能性があります。

ちなみに、内容証明郵便はすべての郵便局で取り扱っているわけではありません。差し出そうとしている郵便局には事前に取り扱いがあるかどうか、確認をしておきましょう。

届け出の様式などに法律上の決まりはありませんが、必要な要素を押さえ、内容証明郵便で送付することが重要だといえるでしょう。

弁護士・司法書士に依頼すべきケース

弁護士・司法書士に依頼すべきケース

時効援用は、内容によっては専門的な知識を必要とする場合があります。そのような場合、弁護士や司法書士に依頼することで、適切に時効援用を進めることができるでしょう。

ここでは、弁護士・司法書士への依頼がおすすめのケースを見ていきます。

時効の起算点がわからない場合

時効の起算点、つまり時効期間の始まりがいつなのかがわからない場合、弁護士や司法書士に相談するのがよいでしょう。

たとえば、債務の最終弁済日が不明で、いつから時効が進行しているのか特定できないケースなどでは、専門家の助けが必要です。

弁護士や司法書士であれば、取引履歴などを調査し、時効の起算点を割り出すことができます。

時効援用を行うには、時効の起算点を正確に把握しておく必要があります。それが不明瞭な場合は、弁護士や司法書士に依頼して、専門的見地から特定してもらうのが賢明だといえるでしょう。

利息制限法に触れる高金利の場合

利息制限法の上限金利を超える、いわゆるグレーゾーン金利での借金の場合、時効の計算が複雑になります。

このようなケースでは、弁護士に依頼するのが最も確実です。弁護士であれば、グレーゾーン金利を踏まえて適切に時効を計算し、援用手続きを行ってくれます。

利息制限法に関する専門知識が求められるため、一般の方が自力で対応するのは困難を伴います。安心して時効援用を進めるためにも、弁護士への依頼がおすすめです。

債権者からの督促が続いている場合

時効援用の通知を行っても、債権者からの督促が止まないケースがあります。このような事態に陥った場合も、弁護士に依頼するのが得策です。

弁護士が介入することで、債権者からの不当な督促を止めることができます。仮に訴訟などの法的手続きに発展した場合も、弁護士が代理人として対応してくれるため、依頼者の負担を大幅に軽減できるのです。

債権者からの執拗な督促は、時効援用を行う上で大きな障害となります。そのような事態を回避し、円滑に時効援用を進めるためにも、早めに弁護士に相談することをおすすめします。

時効援用後にやるべきこと

時効援用後にやるべきこと

時効援用の手続きを行った後も、すぐに問題が解決するわけではありません。

ここでは、時効援用後に行っておくべきことを見ていきましょう。適切なフォローを行うことで、借金問題の確実な解決に近づくことができるはずです。

信用情報機関に時効の報告をする

時効援用を行っても、信用情報機関の記録からは自動的に債務の記録が消えることはありません。そのため、自ら信用情報機関に時効が成立したことを報告する必要があります。

具体的には、時効援用通知書のコピーを信用情報機関に送付します。債権者にも信用情報機関への報告を求める旨を通知書に記載しておくとスムーズです。

信用情報機関の記録は、新たな借り入れの審査などに影響を与えます。時効成立の事実を報告し、記録の修正を促すことは、将来の借り入れにも関わる重要な手続きだといえます。

時効援用後の督促にも注意する

時効援用の通知を行ったからといって、必ずしも債権者からの督促が止むとは限りません。なかには、時効成立後も執拗に支払いを求めてくるケースもあります

そのような場合、弁護士に相談して適切に対処することが大切です。時効援用後の不当な督促は、債権者側に法的責任が発生する可能性もあります。

弁護士に依頼することで、債権者とのトラブルを回避しつつ、時効援用の効果を確実なものにすることができるでしょう。

根本的な借金問題の解決を図る

時効援用はあくまで対"症"療法に過ぎません。抜本的な借金問題の解決のためには、時効援用だけでは不十分な場面もあります。

たとえば、時効援用した債務以外にも多額の借金を抱えているような場合、時効援用だけでは借金地獄から脱却できないでしょう。

そのような事態では、借金の原因を見直し、より根本的な解決策を探る必要があります。借金の原因を断ち切り、抜本的な解決を図るために、弁護士や司法書士による債務整理などを検討するのも一案です。

任意整理や個人再生、時には自己破産といった選択肢も視野に入れつつ、専門家とともに最善の道を模索していくことが重要だといえます。

債務整理との違いは?

債務整理との違いは?

時効援用と債務整理はどちらも借金問題の解決策ですが、その性質や範囲は大きく異なります。

時効援用は1つの債務に対して行う手続きであるのに対し、債務整理は複数の借金を一括して減額や免除を目指すものです。

ここではその違いについて詳しく見ていきましょう。

時効援用はあくまで1つの債務に対する措置

時効援用とは
時効援用とは、特定の債務について、一定期間債権者から請求がない場合に、その債務の支払い義務を免れることができる制度です。

つまり、時効援用は1つ1つの債務ごとに行う必要があり、複数の債務を一括して減額や免除するものではありません。

たとえば、Aという債権者から借りた債務について時効援用できたとしても、Bという債権者からの借金には影響しません。それぞれの債務について、個別に時効の成立要件を満たしているか確認し、時効援用の手続きを踏む必要があるのです。

債務ごとに時効の起算点や期間が異なることもあるため、時効援用を検討する際は、専門家に相談して適切に対応することが重要といえるでしょう。

債務整理は借金問題を総合的に解決する手続き

債務整理とは
債務整理とは、任意整理、個人再生、自己破産など、法的な手続きを通じて借金問題の総合的な解決を図るものです。

債務者の収入や資産、家族構成などの状況を踏まえ、弁護士や司法書士と相談しながら、最適な方法を選択します。

任意整理であれば、債権者との交渉により借金の減額や返済期間の延長などを目指します。個人再生や自己破産は、法的な手続きを通じて、借金の大幅カットや免除を受けることができる手続きです。

複数の債務を抱えている場合でも、債務整理によって一括して解決を図ることが可能です。

ただし、それぞれのメリット・デメリットもあるため、専門家とよく相談して方針を決めることが大切といえるでしょう。

時効援用後も債務整理は検討に値する

時効援用によって特定の債務の支払い義務は免れても、他の債務が残っているケースも少なくありません。せっかく時効援用できたのに、残った債務で借金地獄から抜け出せないのでは意味がありません。

そこで、時効援用後に残った債務については、債務整理による解決を検討するのも選択肢の1つといえます。弁護士や司法書士に相談し、自身の状況を総合的に判断してもらうことで、借金問題の根本的な解決につなげることができるでしょう。

時効援用はあくまで対症療法であり、借金問題の本質的な解決のためには、債務整理などの選択肢も視野に入れておく必要があります。

専門家とよく相談し、最善の方法を見極めていくことが重要です。

闇金の借金でも時効援用できる?

闇金の借金でも時効援用できる?

闇金からの借金は、法的にはそもそも返済義務がないケースがほとんどです。しかし、闇金業者は違法な手段で執拗に取り立てを行うことが多く、時効援用のような通常の対応では解決できないことがあります。

ここでは、闇金問題における時効援用の可否と、適切な対処法について解説します。

闇金業者からの借金=時効がない?

本来、闇金業者が非合法な方法で貸付を行う行為は民法上の不法行為にあたり、借金をした人に返済義務は発生しません。法律用語でいうところの「不法原因給付」というものに該当するのです。

したがって、本来は時効の援用云々の話ではなく、そもそも返済する必要のない債務だと言えます。

しかし現実問題として、闇金業者は暴力的な取り立てを繰り返し、債務者の生活を脅かします。通常の借金のように「時効が成立したから支払い義務がない」と主張しても、闇金業者が取り立てを止めるとは限りません。

むしろ、専門的な対応と法的知識を持つ弁護士の介入が必要になるケースが多いでしょう。

闇金対応は弁護士に依頼するのが安全

闇金トラブルを自力で解決しようとするのは危険です。家や会社に押しかけられたり、暴力をふるわれたりするケースも少なくありません。また、法律知識がないために、返済義務のない債務を余計に肥大化させてしまう恐れもあります。

そうしたリスクを避けるためにも、まずは闇金問題に詳しい弁護士に相談し、適切な対応を依頼するのが賢明です。弁護士であれば、たとえ相手が暴力団関係者であったとしても、毅然とした態度で交渉し、トラブルの沈静化を図ってくれます。

法的な知識と経験を持つ専門家を味方につけることで、グレーゾーンな闇金問題にも冷静に対処していくことができるでしょう。自力解決に走るのではなく、一刻も早く弁護士に相談するのが肝要です。

闇金に時効援用通知を送るとどうなる?

「時効が成立したので支払い義務がない」という時効援用の通知を、闇金業者に送ったからといって、取り立てが止むとは限りません。むしろ、「時効など認めない」と言って、さらに執拗に迫ってくる可能性が高いでしょう。

そんな相手に、時効援用のような債権債務関係の通常のルールを主張しても、効果は望めません。それどころか、「時効を援用しようとしている」と知られたことで、より激しい取り立てに遭う危険性さえあります。

したがって、闇金への時効援用通知は避けるべきだと言えます。

闇金問題の解決は、弁護士への相談と依頼から始めるのが最も安全で確実な方法なのです。個人の判断で危険な行動は取らず、一日も早く専門家に相談しましょう。

時効援用に関するよくある質問

時効援用をめぐっては、費用面や借金履歴への影響など、さまざまな疑問が寄せられます。

そこでここでは、時効援用に関する代表的な質問を取り上げ、それぞれ詳しく解説していきます。お悩みの参考にしてください。

Q. 時効援用には費用がかかる?

時効援用の通知を自分で作成し、債権者に送付する分には、郵送料以外の費用はかかりません。

書面の作成や送付にかかる実費は、わずかな金額で済むでしょう。

ただし、時効の成立要件の確認や通知書の作成を弁護士や司法書士に依頼する場合は、それなりの費用が発生します。

着手金や報酬額は事務所ごとに異なるため、依頼前に必ず確認しておきましょう。

もっとも、時効の援用を誤ると、かえって時効の更新を誘発するリスクもあります。多少の費用をかけても、専門家に依頼して適切に時効を援用してもらう価値は十分にあると言えるでしょう。

Q. 時効援用しても借金の記録は残る?

時効が成立し、債務者が時効を援用したからといって、信用情報機関に登録された借金の記録が自動的に抹消されるわけではありません。

債権者に対して、時効の成立を理由に情報の削除を求める必要があるのです。

もし債権者が応じない場合は、信用情報機関に直接削除を申請するのも一つの方法です。その際は、時効援用の通知書や、時効成立を裏付ける資料を添えることが求められます。

いずれにせよ、時効援用後も借金の記録が残り続けるケースは少なくありません。記録の削除には、債務者側の能動的な働きかけが欠かせないのです。

Q. 時効援用後に再び借金できる?

法律上は、時効援用によって特定の債務の支払い義務が消滅しても、新たな借り入れを制限する規定はありません。したがって、時効援用後も他の金融機関から借金をすることは可能です。

しかし実際には、過去の借金履歴や社内ブラックがネックとなり、新規の借り入れ審査に通りにくくなるケースがあります。

場合によっては、弁護士による個人信用情報の回復が必要なケースもあります。ご不安な方は担当弁護士にご相談ください。

まとめ

時効援用は法的には自分でも可能ですが、失敗のリスクが高いため、弁護士や司法書士に依頼するのが賢明でしょう。

時効期間の計算や、利息制限法に触れる高金利の借金、債権者からの督促が続くケースなどは、特に専門家の助けが必要です。時効援用後も、信用情報機関への報告や根本的な借金問題の解決など、やるべきことがあります。

債務整理との違いを理解し、時効援用後の状況に応じて、弁護士や司法書士と相談しながら、総合的な解決を目指すことが大切です。

なお闇金の借金は、時効援用とは異なる対応が求められるので、注意が必要です。

借金問題で困ったら、まずは専門家に相談することをおすすめします。お悩みの方は、ぜひ一度当事務所までお気軽にお問い合わせください。

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